NHKスペシャル「彼女は安楽死を選んだ」

だいぶ前の番組だが、6/5に放送されたNHKスペシャル「彼女は安楽死を選んだ」という番組を録画していたので、ようやく見た。

番組に取り上げられていた「ミナさん」の言葉一つ一つがとても重くて、ずっしりと胸に刺さった。生きることとは何なのか、天井を見続けるだけの毎日に何の意味があるのか、そういった実感のこもった話を聞くのが、本当に苦しかった。
ミナさんの場合、そう遠くない未来に死が待っている病気のようで、私のような、治りはしないけど放置したからといって死ぬほどの病気でもない人間からすると、死への切迫感?のようなものが全然違うのだと思う。主治医が言っていた「死ぬことでしか解決できない病気じゃないと、外国へ行っても安楽死させてもらえないよ」ってこういうことなのだろうな、と思った。

ミナさんは身体疾患ということで、毎日毎日徐々に自分の体がいうことをきかなくなっていく、というのは、相当な恐怖であり、不安でもあると思う。
ミナさんが「人にしてもらって、ありがとうと言えなくなる人の気持ち」という話をしたところも、本当に考えさせられた。私は精神疾患だから、そこまでのことを考えたことが無かった。しかし、祖母が小脳萎縮症という身体疾患で身体障害者手帳を持ち、特養に入って、徐々に運動機能が衰えて、最後には言葉すら話せなくなったことを思い出して、あぁもしかしたら祖母も「ごはん食べさせてくれてありがとう」とか言いたかったのかな、と思うと、胸がいっぱいになった。。

消極的安楽死が一部で行われ始めていることは知らなくて、結構意外だった。安楽死すべてに反対している人には申し訳ないけど、私はこの程度は認めてもいいのではないかと思う。祖母も晩年、医者から「呼吸器を付けますか?」と聞かれたらしいが、「それを付けて何日生きられますか?」と聞いたら、「1週間くらい」と言われたらしくて、「付けません」と答えたそうだ。
ハッキリ言って、80歳以上のような高齢者に延命治療って無駄なんですよ。たった1週間、寿命を延ばすために、何十万もの医療費が使われる。もう日本はそういう所にお金をかけられるような豊かな国ではない。

妹さんが「人の協力も得て生きて」みたいなメッセージを送っていたが、これもなかなかに難しい問題だなぁと思った。やっぱりね、気が引けるんですよ。ミナさんの場合は4人姉妹だから頼りやすいけど、うちは弟で男だから、例えば風呂に入れるんでも裸姿は見られたくないし、おむつなんかも変えられたくない、下半身を見られたくない。まさか義妹にやらせるのもどうかと思うし。
じゃあ、介護スタッフに頼めば?っていう話になるけど、すでに精神障害で年金暮らし、お金は誰が出すのか、って話になる。

一方で、人工呼吸器を付けることで安楽死を選ばなかった「道代さん」という方も出てきた。この人の考え方を知ると、単純に「動けなくなるから安楽死したほうがいい」と言えなくなってくる自分に気が付いた。本人は生きていたいし、頑張りたいのだ。それを誰が止められるというのだろうか?

スイスの安楽死団体「ライフサークル」の代表さんは、聞いた限りとても簡単な英語をゆっくり話すので、英語力に自信が無い人でも意思疎通に全然問題無さそうだし、スマホの翻訳機能も使ってもらえるし(ビバ!ハイテク)、常日頃から「死にたい死にたい」「安楽死安楽死」言ってる人は、とっとと行ったほうが良いのではないかと思う。これからどんどん希望者が増えて、今回のようなミナさんのように何か月待ちとかになって、身動きも取れない状態になってしまったら、もしかしたら希望しない延命治療を施されてしまうかもしれない。もし本当に死にたいならね……。
そのあたりはやはり代表さんもよく分かって、「2日、考える時間をあげる」と言っていた。まぁそうなるんだろうねぇ。すぐには死なせてもらえない。

ミナさんが安楽死を望み、実行した時、私も泣いてしまった。こういうシーンで泣くような余裕があるうちは、私は安楽死を選ぶべきではないのだと思った。