『みえない優しい傘』読了

2021年7月(多分)のコンボ『こころの元気+』が送られてきたとき、『みえない優しい傘』という冊子が同封されていた。
この冊子は、親が精神障害者であるその「子供」向けの本だ。私がこの冊子を読み終えるのに長く時間がかかってしまった理由は、明確に診断名が付いているわけではないが、症状からどう見ても精神疾患だろうと言える親がいたせいだった。

子供の頃から、母は時々心肺停止意識不明で倒れていた。救急車を呼んで病院へ連れていかれるが、病院に着いた頃には症状が治まっており、そのまま家へ帰されるのが常だった。
それ以外での母の様子は、常にピリピリしていて、顔は蒼白、目は吊り上がり、般若のようだった。それを指摘するとビンタが飛んできたり髪を引っ張られたりするので、次第に何も言わなくなった。
特に小学生の頃は無力だから、本当に親の顔色を伺うような生活をしていたと思う。

父も父でちょっとおかしくて、私が高校生の頃、突然「我が家は由緒正しき清和源氏の末裔だ、落ち武者の家系だ」とか言い出して、家系図を作ろうとしたことがあった。
結局家系図は作るのに100万円かかると言われて挫折したようだが、しばらくは「うちは特別だ」「先祖は灘で造り酒屋をしていた名士だ」「灘の駅周辺は見渡す限り全部うちの土地だった」「うちは大地主だった」などと世迷い事を言っていた。
今思えば誇大妄想だよなぁ……。

こんな感じだったので、この『みえない優しい傘』を読み始めてすぐに、泣いてしまった。ここにいるのは子供の頃の自分だ、と思った。読んでいて苦しくなるのと同時に、慰められているようにも感じた。
きっとこの本は、何度読んでも泣くと思う。今まで何度も「捨てよう」とか「読むの止めよう」とか思ったけど、最後まで読み切れて良かった。