バリバラ「バリバラジャーナル 見え始めた精神医療の実態」

バリバラ選、つまり再放送だが、「バリバラジャーナル 見え始めた精神医療の実態」を録画していたので、見た。
前半は、精神疾患の患者が「精神病」というレッテルを貼られた途端、一般社会で生きていくことを許されず、精神科病院に放り込まれる現実を描いていた。40年、50年と精神科病院に入院「させられた」患者たち。見たところ、意思疎通が出来ないわけでもなく、この程度だったら、福祉のサポートさえあれば、地域で十分暮らしていけるのではないかと思った。
特に「俺、入院してたから、何も出来ない」という男性患者が印象深かった。入院していなかったら、一般社会で一人暮らしをしていたら、料理は難しいかもしれないけど、洗濯くらいなら出来るようになっただろうに。長い入院生活は、患者から「生きるちから」を奪うのだと痛感した。
ただ、いわゆる急性期の患者には、入院施設は必須ではなかろうかと思った。私自身は、精神科への入院経験が無いので、想像や伝聞でしか語れないのだけど、もし、最初の大学時代に通っていたメンクリで、医師の前で興奮状態に陥った時に、すぐ「鎮静剤の注射」ではなく「措置入院」の対処が取られていたら、もっと違った人生になったかもしれない。まぁ悪い意味で違った人生になっていたかもしれないけど。

番組では、福島の矢吹病院という所が取材されていた。原発周辺にあった精神科病院に入院していた患者が、原発事故で県外へ転院し、また福島に戻ってくるために、矢吹病院が一旦受け入れることになっているそうだ。
でも、なんで患者の多くが、「もし入院してなかったら、結婚とか仕事とか出来たと思う」って言うんだろうねぇ? それ、今時健常者でも難しいのに。まともな収入の無い精神障害者の男性が、簡単に結婚できるわけ無いだろうに。そこらへんの現実感の無さが、まさに長年の入院で麻痺してしまった所なんだろうねぇ。
矢吹病院の医師が、「家族が入院を望んでいる」的なことを言っていたのが印象的だった。ほかにも、患者の家族へのインタビューが何名が出てきたけど、揃って「家には置いておけない」「家で面倒が看られない」等を言っていて、なんかモニョった。精神疾患の患者は、認知症の患者と似たような感じなのかもしれない。本人への意思確認が疎かにされがち、という意味で。患者が「家で、地域で生活したい」と言っても、家族が「無理」と言ったら、入院させられてしまうのだ。
でも、多分、今はそうはなっていないと思う。というか、そう思いたい。私が通う支援センターにも、結構症状が重めの人がたまに来るけど、訪問介護などを受けて、なんとか地域で暮らしているようだ。みんながそういう風になれればいいと思うんだけどね。
なんか、「真面目にやってれば退院できるから」と思って暮らしてきた女性が、まるで刑務所にいる受刑者のようで、精神科病院って何なんだろう、と愕然とした。
また、知的障害者が精神科病院に入院させられているケースが結構ある、というのも驚いた。なんだろうな、この矢吹病院の医師は、すごく良心的だなと思った。無駄に入院させて患者から医療費を巻き上げようってタイプの医者じゃない。ちゃんと患者の疾病を見極めて、「この人は精神病じゃなくて知的障害だから、それに合ったサポートをしてあげるのがいい」と判断している。これからの精神科はこうでなくちゃ、って思った。

後半、時男さんという約40年入院していた男性が出てきた。この人もぱっと見は障害者に見えない。むしろ、ダンディーな雰囲気で、テレビでも言ってたけど、熟女にモテそう。
この人は最初、ATMの使い方や切符の買い方も分からなかったそうだが、サポートスタッフに付き添われて、社会復帰をしていったようだ。今は「普通の生活」をエンジョイしているようで、良かったなぁと思った。とても40年近く入院していた人には見えない。
時男さんの弟さんがテレビに出てきたけど、音声を変えてて、そのあたりからして、精神病に偏見があるんだろうな、と分かった。言ってる内容も、偏見に満ちたもので、家族に理解されていないというのがこれほど悲しいことなのかと、改めて痛感させられた。

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